2012年10月29日月曜日

Imitating

 北へと急ぐ金曜の夜。水位が高いが、濁度は6と低い。これなら釣りになるはずだと、急いで釣り場へと向かう。今日は今期よかった3か所を順にまわろうと決めていた。釣り場に着くと想像以上に寒く、そして水位が高い。案の定1ヶ所目ですでにいつものように釣り下れなかった。それではと2か所目に向かうと先行者が準備していた。そんなに大きなポイントではないのでパス。3か所目はというとやっぱり準備している人がいたけれど、声をかけて大きく離れて釣りをした。
 ここまでノーリアクション。
新規ポイント開拓をしようにも、水位が高すぎて身の危険を感じた。そして河原があるところにはいたるところ車がとまっているので多少嫌気がさしてきた。そしてこの調子だと、いつもの腰までのポイントが胸の高さになっていることでしょう。
 気温も低く、木々の葉にも勢いがない。川の中には色とりどりの枯葉が混じる。オレンジや黄色のフライが違和感なく感じる時期ということか。このなんともいえないさみしさは嫌いじゃない。ただ、虹鱒が追いかけられなくなることが残念。リールや竿に不安を感じるようなビッグなやつにもっと翻弄されてみたかった。

 残暑が厳しかった今年、急な気温の変化についていけなかったかと、反省する。大きく変わる条件に対して自分の釣りで対処することはなかなか難しかった。もっと経験が必要ということ。気持ち的に今年はもうこの流れはいいかなと思い始めていたが、なんとも物足りない。本当なら泊って夕方と明日に期待をかけるところだけれど、帰らなければならない。昼ごろ、そういえば、と山上湖のことを思い出した。
 川が調子悪い時はこっちによく走っている方がいた。

 たまには同じコースを真似をしてみようと思い立つ。想像以上の時間をかけて湖についた。




振り返ると、釣りを始めたころの初夏に来たことがある。当時は真昼間からライズだらけでチビ虹とルアーであそんでいるとき、なんだか思い立って小さなスプーンを岬上のポイントから投げていたら、今までかかったことのない魚がかかった。大きく首を振り、いったいなにが起きたのかと動揺する自分を試すかのように、ゆっくりと動く。そのまま右に動いたかと思うと、突然猛烈な勢いで猛ダッシュ。あえなく6ポンドラインはブレイクした。その直後、嘲笑うかのように湖面をはねたのは間違いなくビックサイズの虹鱒だった。夕暮れ前の西日に光る魚体は今でも目に焼き付いて離れない。

 その後、40弱ぐらいまでは何匹か釣れたと思う。でもあのサイズはでてこなかった。釣りにのめりこむにつれてフライへと変わり、よく釣り方自体がわからないまま、6番のシングルハンドを持ってここにやってきた。日が傾くにつれて気持ちも沈み、今日も駄目だったかと車に戻ってきたとき、夕暮れに合わせるように準備をしている人がいた。
「どうでした。え?もうやめるんですか?これからがいいとこなのに!」
と、ニヤニヤしながら準備をする方がいた。え?これからがいいところなの?
「もうライズなんてぼこぼこだよ!」
 そんな話を聞いて黙っているほど人間ができていないので、誘われるように後をついて行った。
 そこには驚くような光景がまっていた。ゆったりとしたインレットの流れに流れるカゲロウを捕食するライズ。それを狙い撃ちする釣り人たち。昼間はいなかったのにどこからともなく現れて釣り場を埋めていく。彼らの手には間違いなく40アップの虹鱒が。目の前でポコポコ釣れている。あんなに釣れなかったはずなのにいったいどうしたのだろう。
 その日、あれだけのライズを前にして自分は釣れなかった。猛烈に悔しい気持ちと、フライフィッシングの可能性に驚きながら、毎週通うこととなる。

 あの日声を掛けてくれた樋口さんのことを今でも思い出す。人懐っこい話し声と心の底から釣りが好きと思える話しぶり。何にもわかっていない現地で知り合った自分と一緒に釣りをしてくれた。彼こそまさに自分をフライフィッシングにのめりこませた張本人である。その後彼も長い夏休みを終えて地元に帰った。ムキになって何年か毎週通いつめる日々がつづいた。気がつくと自分にも子供ができて自由に釣りにいけなくなったり、大雨でダムに辿りつけなくなったり。ときにインレット側の土砂崩れのせいか、インレット自体に水を流さなくなってしまったのが痛い。大きく減水した泥の湖岸を歩いて魚をさがしたり、いいサイズの魚にも出会えたこともあったけれど、気が付いたら足が向かなくなっていた。そんな山上湖で久々に釣りをする。


 先行者は二人。並ぶようにしてスペイで投げる。Atlantic Salmon のインターは520grだったかな。3x12ftのリーダーに黒のBHウーリーバガー8番。風がやんでタイミングが合うと綺麗にターンオーバーする。群れが定期的にまわっているのか、ときにパタパタと鱒がかかる。
 日が暮れるにつれて場所を移動。シングルハンドのときは後ろの木が気になって釣りにならなかったところ。今は普通に30mキャストできる。



 沖目で首を振って多少大きく感じさせた魚。これから走るかと思いきやなかなか走らない。近くによってきて白斑を確認して納得。アメマスだからだ。痩せた魚だけれど、これがかかるともう冬は近い。虹鱒は終わりということか。今年の釣りに対する寂しさと、これからのアメマスシーズンへの期待と。


 

2 件のコメント:

  1. いい感じですね・・・
    なんとなく、気持ちが伝わります。
    アメマスは、まだ、これからですが、きっと、よい釣りができますねwww

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  2. やすこうさんこんばんは。
    今年最後だろう山上湖でしたが、たまたまタイミングよく釣れてくれていい感じにおわることができました。湖の流れはだいぶ変わってしまいましたが、虹鱒に交じってまだアメマスがいたことに、いろいろと思いだしながらちょっとだけほっとしたんですよ。
    自分の釣りはこれから春までアメマスへとシフトします。やすこうさんもぜひ一度北海道のウィンターフィッシングをどうぞ。なかなか雰囲気がいいですよ。

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